ばけぴとの分析化学講座

分析化学について解説していきます。

第8-3回.クロマトグラフィーの分離原理を詳しく解説

 

こんにちはばけぴとです。

今回は前回に引き続き、クロマトグラフィーについて解説します。

ミクロレベルで、混合物がどのような原理で分離されるのかを見ていきましょう。

 

 

 

 

1.カラムの分離原理

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図1.カラムの分離原理

 それでは、まずカラムの分離原理を見ていきましょう。今回は、極性で分離するパターンを例に説明します。図1に示す通り、カラムには、充填剤が敷き詰められています。HPLCでは、充填剤に極端に高極性か、極端に低物質物質を使用します。物質は、基本的に極性が近いものと、強く結合(相互作用)する性質があります。そのため、カラムに混合物を注入すると、充填剤と極性が近い程、物質は強く結合します。そこに溶離液を流し続けると、充填剤との結合が弱い物質から、順に分離されていきます。詳しいメカニズムは、図1をご覧ください。

 

2.充填剤の種類を変えるとどうなる?

 

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図2.充填剤の種類による影響

 次に充填剤の種類による影響を説明します。図2に充填剤の極性が低い時と、高い時で物質の分離にどのような影響が出るか示しています。分離成分と充填剤の極性が近いほど、その間の結合も強くなるので、充填剤が低極性の場合は、分離成分の極性が高い程カラム内を速く進みます。よって、分離順序は①高極性→②低極性となります。一方、充填剤が高極性の場合は、分離成分の極性が低い程カラム内を速く進むので、分離順序は①低極性→②高極性となります。

 

3.溶離液を変えるとどうなる?

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図3.溶離液の種類による影響

 次に溶離液の種類による影響を説明します。図3に溶離液の極性が低い時と、高い時で、物質の分離にどのような影響が出るか説明します。なお図3では、溶離液の極性は変えても、充填剤の極性は低極性のものを使用した時で固定します。まず、充填剤が低極性の時は、物質の極性が低い程強く結合します。溶離液の極性が高い時は、溶離液は低極性物質を充填剤から引き剥がせませんが、高極性物質はすんなり充填剤から引き剥がせまず。その結果、低極性物質はゆっくりと、高極性物質はすばやくカラム内を移動します。そのため、低極性物質と高極性物質の移動スピードの差が大きくなり、分離性が向上します。一方で、溶離液が低極性の時は、低極性物質も高極性物質も溶離液で、簡単に引き剥がせてしまいます。その結果、低極性物質の移動スピードが上がり、分離性が悪くなります。

 分離性が良いのは大事ですが、分離時間もその分長くなりますので、バランスを見て溶離液の極性を決定しましょう。分離性と分離時間を最適化するために、ステップワイズ分析やグラジエント分析という方法もありますので、最後に簡単に説明します。

 

4.まとめ

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図4.まとめ

 図4にまとめを示します。充填剤、および溶離液の極性を変えると、どのように分離性や分離所要時間に影響が出るかを表にまとめました。また、図4の下の方に、注記でステップワイズ分析とグラジエント分析の簡単な例を紹介しますので、参考にしてください。

 

 

本日の講義は以上です。

次回は、カラムクロマトグラフィーについて、説明します。

どちらかというと、有機合成でよく使われる知識だと思いますが、せっかくカラムについて学んだんので興味ある人はご覧ください。

 

それではまた。

 

 

ばけぴと