ばけぴとの分析化学講座

分析化学について解説していきます。

第8-4回.カラムクロマトグラフィーについて(有機合成で使われる)

こんにちは!ばけぴとです!

今回はカラムクロマトグラフィーについて説明します。

今回の内容は分析化学というよりは有機化学(有機合成)の内容になります。

分析化学の知識が他分野でどのように使われているかを覗いてみましょう♪

また、有機化学を学んでいる人にとっても、カラムクロマトグラフィーを理解できる有意義な内容となっているので、ぜひご覧ください。

 

それではいきましょう!

 

 

 

1.有機合成の実験フロー(仕込み~結果まとめ)

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図1. 有機合成の実験フロー(仕込み~結果まとめ)

 それでは、まず有機合成の一般的な実験フローを説明します(図1参照)。反応仕込み→反応→クエンチ→分離(抽出・濃縮・カラム)→分析→結果まとめの順で進みます。有機合成でカラムが必要な理由を下記に記載しますので、興味ある人はご覧ください。

有機合成では、化学反応(構造を変えること)を起こして、ほしい物質を手に入れます。化学反応を起こすには、基本的には基質溶液(基質とは反応前の物質のこと)と試薬(化学反応を引き起こす物質)を混ぜます。すると化学反応が起こり、基質の化学構造が変わります。この構造が変わった物質を生成物といいます。「生成物ができたら終わり!」という訳にはいきません。なぜなら、化学反応後の溶液中には、生成物以外にも未反応の試薬や反応後の試薬、反応せずに残ってしまった基質が存在してしまっています。また生成物にも、想定通りに化学反応が進み、望ましい構造の生成物と、予想外の進み方により望ましくない構造の生成物が混ざってしまうかもしれません。

つまり、反応後溶液中には「基質・未反応試薬・反応試薬・望ましい生成物・望ましくない生成物、溶媒」などが存在しています。未反応試薬は基本的に「クエンチ→抽出」、溶媒は「濃縮(エバポレータ)」で取り除けますが、それ以外は前述操作では取り除けません。そのため、カラムクロマトグラフィーにより分離し、高純度の望ましい生成物を手に入れます。

 

 

2.カラムクロマトグラフィーの操作手順

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図2. カラムクロマトグラフィーの準備手順

 次にカラムクロマトグラフィーの操作手順を説明します(図2参照)。まず、カラム管を用意し、そこに、「綿→海砂→固定相」の順で敷き詰めていきます。その後、固定相上に濃縮後の反応混合物をパスツールピペット等を用いて載せます(この操作をチャージやマウントといいます)。そしてコックを開いて、固定相にしっかりと混合物を吸着させた後、海砂を載せて、溶離液(移動相)をカラム管に注ぎます。各物質の用途は図2をご覧ください。これでカラムクロマトグラフィーの準備は完了です。

 

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図3. カラムクロマトグラフィーの分離イメージ

 最後に、カラムクロマトグラフィーの分離イメージを図示します(図3参照)。混合物がどのように分離され、純度の高い生成物を得られるかを視覚化しています。詳しい分離原理については、HPLCのカラムと同じです。そちらは第8-3回で解説していますので、そちらをご覧ください。

 ちなみに海砂や綿は基本的に物質を吸着させないため、どれだけ厚く積もうと、物質の分離度に影響は与えません。面倒という理由で、固定相の上に海砂を載せないガサツな人もいます。笑

 

今回の講義は以上です。今回は有機合成の範囲にも触れてみましたが、いかがでしたでしょうか?私が有機合成出身で、懐かしさを感じながら、執筆させていただきました。笑 次回はTLC(薄層クロマトグラフィー)について説明します。今回のカラムクロマトグラフィーとかなり関係が深い内容ですので、次回も楽しみにしててください!

 

それではまた!

 

PS 図1.で有機合成の実験フローを記載しましたが、基本的には、抽出後に硫酸ナトリウムで脱水したり、カラム後に濃縮したりしますが、わかりやすさ重視のため、一部省略しています。また、化学反応の種類によっては、クエンチしないものやカラムをしないで、次の反応を行うものなどもあります。ケース・バイ・ケースで一部の工程を省いたりすることもありますが、ほとんどの反応は図1のフローに沿って行うという目安程度に見ていただけると幸いです。

 

 

ばけぴと