ばけぴとの分析化学講座

分析化学について解説していきます。

第8-2回.HPLCの原理

 

こんにちは、ばけぴとです。

今回はこれまでちょくちょく出てきたHPLCについて、説明します。

HPLCを用いると、サンプル中の各成分をどのように分離し、検出していくかを図示しながら解説していきます。

それではいきましょう

 

1.HPLCでできること

 HPLCの機器構成を図1に示します。HPLCは一言でいうと、「混合物をそれぞれの物質へと分離し、検出する機械」です。HPLCは溶離液(移動相)をポンプで、注入口→分離カラム→検出器→廃液へと流し続けます。そのため注入口からサンプルを加えると、そのまま分離カラムへと運ばれますね。分離カラムでは混合物を各成分に分離することができます。図1でいうと、混合物Xを分離カラムに通すと、物質AとBとCにそれぞれ分離することができます。どのようなイメージで、物質ABCが分離されるかは、図2で説明します。

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図1.HPLCでできること

 

2.HPLCの分離・検出のイメージ

 

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図2.HPLCの分離・検出イメージ


 HPLCの分離・検出イメージを図2に示します。まず混合物Xを注入します。混合物X中の物質A,B,Cはいずれも、分離カラムに到着直後は同じ位置にあります。しかし、分離カラム内では、物質毎に進む速さが変わるので、物質A,B,Cもそれぞれ違う速さで分離カラム内を進みます。そのため物質A,B,Cもそれぞれ速さが異なり、注入時から2分後に物質C、注入時から4分後に物質B、注入時から6分後に物質Aが検出器に到着します。このような原理で、HPLCは混合物中のそれぞれの成分を分離し、検出できます。

 

分離カラム内を物質が進むスピードが異なる理由は、色々あるので次回説明します。

身近な例で説明すると、図3のように金魚は軽く小さいので速いスピードで水流に流されるが、重く体の大きいサメは水流に逆えるので、遅く流されていくイメージと似ています。ざっくりですが、このようなイメージです。笑

ちなみにこのような、物質の違いにより、混合物中の各成分を分離する操作をクロマトグラフィーといいます。

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図3.身近な例での分離イメージ説明

 

3.得られるチャート

 図4にHPLCにより得られるチャートを示します。チャートの横軸は保持時間、縦軸はピーク強度をとります。保持時間は、注入から検出されるまでにかかった時間のことです(分離カラムを通るのにかかった時間、つまり分離カラムに保持された時間のこと)。物質Cは注入時から2分後に検出器に到着しました。検出器に物質が通ると、検出器が物質を感知し、その瞬間にピーク強度が大きくなります。そのため保持時間2分のところで、ピーク強度が最大になっています。物質BとAも同様に、注入時からそれぞれ4分・6分後に検出器に到着したので、保持時間がそれぞれ4分・6分の所で最大となっています。

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図4.得られるチャート

 ちなみに余談ですが、ピーク強度は物質の種類により、「感度」が異なります。そのため、物質A,B,Cのいずれも含有濃度が1%と同じ値であっても、ピーク強度が同じ値を取るとは限りません。図3でいうと、物質Cは0.4、物質Bは1.0、物質Aは0.5のように値が異なります。この強度の得られ具合を感度といいます。感度が良い場合、低濃度でも大きいピーク強度が得られます。小さい音が聞こえる人に、耳の感度が良いなど言ったりできますよね。それと同じです。

 また、基本的にダイナミックレンジ内であれば、各物質の含有量が増える程、ピーク強度は増加します。例として、物質Cの濃度が1%の時ピーク強度0.4なら、濃度が2%の時ピーク強度が0.8になります。また、物質Bも同様に、濃度が1%の時ピーク強度1.0なら、濃度が2%の時ピーク強度が2.0になります。

  

本日の講義はここまでです。次回は、クロマトグラフィーについて、もう少し踏み込んで説明します。物質のどのような違いにより、分離できるのかについて説明します。

それではまた。

 

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ばけぴと