ばけぴとの分析化学講座

分析化学について解説していきます。

第一回.定性分析と定量分析


はじめまして。
ばけぴとです。

記念すべき第一回は定性分析と定量分析の違いについて説明します。分析に限らず、化学者にとっては避けて通れない道ですね。必ず理解するようにしましょう。とはいっても、難しい話じゃないので、安心してください。皆さんがイメージできるように、説明していきますので、いまいちわからないという人は最後まで読んでくださいね♪

 

それではいきましょう! 

 

 

 

1. 定性と定量の意味とは?

それではまず、語句の意味について説明します。

 

・定性分析

 サンプル中に"何"が含まれているかを調べる分析。または、サンプル中に分析対象が"含まれているか、いないか"を調べる分析。(分析対象例:元素種、分子構造など)

定量分析

 サンプル中に対象が"どのぐらい"含まれているか調べる分析。(分析対象例:混合物中の含有元素濃度、溶質の濃度)

 

*簡単に定性と定量の関係を、図1にまとめてみましたので、そっちもご確認ください♪

fig1. 定量分析と定量分析の違いについて

図1. 定性分析と定量分析の違いについて

 

ただ、これだけではピンときませんよね。それでは、イメージしやすいように、お酒かどうか見分けるための分析を例に定性と定量分析の違いを説明します。

 

 

 

2. お酒の分析を例に、定性と定量を理解しよう!

 それでは、定性と定量について、イメージしやすいように、次に身近な例で説明していきます。説明文が長くなってしまったので、先にまとめの図2を見てみましょう! 

fig2. お酒かを見分けるを例に定量分析を説明

図2. 「お酒かを見分ける」を例に定量分析について説明

 

それでは、定性と定量を理解するために、お題を出します。

 

お題①:目の前に1つの液体があります。これがお酒か当ててください。

 

さて、どうすれば、液体をお酒か見分けることができるでしょうか?

私は下記の分析例①か分析例①'でお酒か見分けます。

 

分析例①:匂いを嗅いで、アルコールが含まれているか調べる。

分析例①':分析機器を用いて、液体中に含まれている各分子の構造をすべて調べ、アルコールが含まれているか調べる。

 

この分析例①と分析例①'は、定性分析ですね。

 分析例①と分析例①'のどちらも、液体中にアルコールが"含まれているか、いないか"調べているので。(分析例①はかなり簡易的ですが、これも一応分析です。笑)

 

分析例①か分析例①'のどちらかを実施すれば、分析した液体がお酒かどうかわかりますね♪

 

それでは、次の場合はどうでしょう?

お題②:目の前に1つの液体があります。これがお酒か当ててください。ただし、ここの国の法律では、アルコール度数1%以上の液体をお酒という。

(*設定は適当です。アルコール度数1%未満でも、未成年は飲まないでね。笑)

分析例②:分析機器を用いて、液体中に含まれるアルコール濃度を調べる。

 

この分析例②は、定量分析ですね。

分析例②では、液体中にアルコールが"どのぐらい"含まれているか調べているので。

 

分析例②で得られた結果が、1%以上ならお酒、1%未満なら法律上お酒じゃないとわかりますね♪(蒸留装置などを用いれば、これを調べることができますが、詳しい分析機器については、今回は割愛します。)

 

ここで、もう一度図2を見て、ここまでをいったん整理してみましょう。

 

この2つのお酒の例を、先程の語句の意味説明に当てはめると、

・定性分析

 サンプル(液体)中に"何"が含まれているかを調べる分析。または、サンプル(液体)中に分析対象(アルコール)が"含まれているか、いないか"を調べる分析。

定量分析

 サンプル(液体)中に分析対象(アルコール濃度)が"どのぐらい(何%)"含まれているかを調べる分析。

となり、定性分析と定量分析の違いがはっきりとわかるのではないでしょうか?

 

今回のお酒の例で、得られる分析結果は、

定性分析では、液体中に「アルコール含有なし」 or 「アルコール含有あり」というアルコール有無。

定量分析では、液体中のアルコール度数が「5%」や「0.5%未満」など具体的な数字。

となりますね。

*これまでの話を簡単に図2にまとめましたので、そちらもご覧ください。

 

 

 

実際の化学分析の現場では、定性と定量を同時に行うこともあります。
具体例としては、多元素同時分析(一度で同時に複数の元素を分析すること)により、
サンプル中にどの元素が含まれているか、またその含有している元素濃度がどれぐらい含まれているか調べることができます。
これらはICP-AESやXRFという分析機器を用いて、分析できます。
(装置名は別記事で取り上げますので、今回は割愛。)
      
今回の講義は以上になりますが、定性と定量について、イメージできたでしょうか?
 皆さんの理解のお役に立てれたなら、とても嬉しく思います。
      
次回は定量分析に必須の知識の検量線について、説明していきます。
化学分析では、ほとんどの定量分析は検量線を使って、濃度を分析しているので、
まだわからないという人は次回の記事も読んでみてくださいね♪

 

それでは、次回記事をお楽しみに!
 
 
~補足(ビジネスでも使われる定性と定量)~
ビジネスの現場でも、定性と定量という言葉は使われます。
ビジネスで「我社のここ数年の売上高の推移について、定性的な解説と定量的な解説を両方してください。」と言われた場合を考えてみましょう。
 
定性的な解説
 「売上高は毎年右肩上がりに推移しています。△△事業は右肩上がりですが、〇○事業は売上高は毎年変動ありません。」となります。
 
定量的な解説
 「売上高はここ3年間、前年比平均で10%ずつ増加しています。△△事業部は、、、(以下省略)」となります。

 

 ビジネスと化学の世界の「定性」は少しニュアンスが違うように感じるかもしれませんが、「定性」は英語でqualityなので、日本語で質という意味です。ニュアンスが違うように感じれど、本質的な意味は一緒かもしれませんね(要は数字以外で教えんかいってことです。笑)。
 「定量」はビジネスも化学も量(数字)で表せという意味で同じですね♪
ちなみに「定量」は英語でquantity(量)です。
        
・まとめ
 定性(quality:質) → ビジネスと化学で少しニュアンスが違うように感じるが、要は数字以外の情報という意味。
 定量(quantity:量) → ビジネスも化学も数字の情報という意味。

 

 少し脱線しましたが、勉強になりましたかね?

雑学なので、この補足は参考程度に見てください。笑

 

 

by ばけぴと